┏━━━━━━━━━ 辞 書 編 ━━━━━━━━━┓ ┃ ┃ ┃ ワ ┃ ┃ ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ■ワークステーション 「横顔の美しい人」とか「とても背の高い人」という言葉がなんら具体性を示 してくれないように,極めて境界線のあいまいな,コンピュータの一ジャンル を表す言葉。 いちおう,パソコンよりは機能も値段も高いということになっているが,そ れなら,「パソコン並の低価格を実現したワークステーション」だの「ワーク ステーション級の演算速度を実現したビジネスパソコン」だのという宣伝文句 は何なのだ,ということになってしまう。しかし,定義があいまいな割には, メーカーや製品ラインナップにおいてはきっちりと境目が示されており,SU NやVAX,NeXTやNEWSはあくまでワークステーションであって,多 少安い製品があってもそれをパソコンとよぶことはない。また,FMR-80や PC-H98がいかに頑張ろうと,これらをワークステーションと呼ぶこともな い。 結局,ごくごく大雑把にいえば,ネットワークの端末兼スタンドアローンに さまざまな処理をこなせるビジネス指向のコンピュータで,以前なら68000系, 最近ではRISC系のCPUを採用し,UNIX系のOSが走るものをワーク ステーションと言う,ということにしておけば大恥をかくことはない。 (付記:くどいようだが,これを書いたのは2年前のことである。) ■ワードプロセッサ(ワープロ) こいつが印刷物まがいの華麗な文字を打ち出すようになって,日本中に自分 の文章力がそこそこだと思い込む人間が増殖してしまった。嘘だというなら, 一度,自分がワープロに向かって打ち込んだ文書を罫線も何もない白紙に手で 書き写し,3か月経って読み返してみるといい。それで唇を噛まない奴は,本 当に文章が上手いか,よほど文字が上手いか,そうでなければ私とは友だちに なれないタイプに違いない。 ■ワイヤードロジック CPUの内部コードであるマイクロコードを「配線(ワイヤ)」によって規 定する方式。たとえば,CISC CPUのマイクロコードを,ワイヤードロ ジックに変更することによって,高速な動作を求めることができる。・・・・とい っても,CPUを作ろうとかいう場合以外あまり縁のないことだが,ともかく, このワイヤードという言葉,かつてマイコンが登場した時代の,「ワイヤーヘ ッド」という言葉を思い起こさせ,オモムキ深いものがある。ワイヤーヘッド というのは,1960年代のアメリカのマイコンキッズが,シャワーも浴びず,髪 の毛がバキバキの針金みたいになっても気にせず,ドロドロのヌタヌタになっ て趣味にや金儲けに没頭していたことを,周囲から評した言葉である。ジョブ ズもウォズニヤックも,ワイヤーヘッドだった。僕たちの愛するコンピュータ は,レゲエおじさんの筋のいい親戚が築き上げたのである。 ■ワイルドカード トランプの「七並べ」や「ポーカー」では一般に,ジョーカーはほかのあら ゆるカードの代わり,いわばオールマイティな存在として立ち振る舞う。海の 向こうではこのようなカードを「wildである」というが,wildのもつ「野生の」 「野蛮な」「乱れた」といった意味のうち,「抑制されない」「自由奔放な」 あたりから出てきた語法だろう。 MS-DOSやTownsシステムソフトウェアの「コマンドモード」では,フ ァイルの一覧を見るには, dir とするのが一般的だが,ここで dir *.com dir a*.* dir ????.exe など,いろいろやってみよう。順に,拡張子がCOMのファイル一覧,ファイ ル名がAで始まるファイル一覧,拡張子がEXEでファイル名が4文字のファ イル一覧が表示されたことだろう。これが,MS-DOSのコンソールがもつ ワイルドカード機能である。MS-DOSでは,ワイルドカードは「*」か「?」 を使って示される。 このワイルドカード機能,たとえばあるディスクに入っているTXTファイ ルだけを別のディスクに全部copy(複写)するとか,BAKファイル(バック アップファイル)だけを全部del(削除)するとか,なかなか便利極まりない ものだが,あまりの手軽さに,せっせと構築したハードディスクのソフトウェ ア資産を del *.* で一瞬にして真っ白にしてしまったという悲劇も,洋の東西を問わずまま耳に する。合掌。 ■ワクチン コンピュータウイルスを発見し,システム破壊を防ぐためのプログラム。・・ ・・といういわば正義の使者のようなプログラムなのだが,これを商売にしてい る会社のごく一部は,なぜあれほどにもアヤシゲなのだろう。